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「今夜、母と妊活します。弐」原文

お世話になっております。鞘でございます。
早速ですが、本作をご購入いただいた方、ご興味いただいた方、本当にありがとうございます。
おかげさまでご好評いただいておりまして、お褒めの言葉や二次使用のお話などもいただけて苦労の介はあったかなと思っています。ただ、いただくご意見の中には厳しいものもございます。おっしゃる通りダークな要素もございますので、ご期待いただいたのに苦手なシーンなどをお見せしてしまったことについては私どもの力不足と反省し、今後の改善に努めて参りますので、ここにお詫びを申し上げるとともに、今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。

実はこのお話はうちの協力ライターうさメープルが作ってくれたもので、ヒントは親戚筋のお話をもとに依頼したのですが。結構これがえぐいんですよね。その状況が。親戚の年寄り達は露骨に部落差別をしていて、その理由の一つが「あいつらは近親交配の一族」だということなのですが、双方が出会ったら本当に殺し合いに発展するんじゃないかと思うくらい「差別」しています。それを元にキーワードを出して、うさに書いてもらったのですが、個人的にはこちらの方が好きだったりします。本当はそのまま使いたいところだったのですが、ボリュームの問題やどうしても入れたかった「夜這い」の表現との折り合いがつかず、うさのせっかくの原文も鞘がいじって別物にしてしまったという経緯があります。

そこで、この場をお借りしてうさの原文をアップしたいなと思いました。
表現としては本編と重なる部分が多いのですが、やむなくカットした近親交配の諸事情を説明するシーンなどもございます。おまけと言っては何ですが、こちらも是非楽しんでいただければと思います。




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「今夜、母と妊活します。弐」〜前編〜

薄暗い廊下をひたひたと歩き、僕は目的の部屋へと向かう。自分の家なのに今まで一度も入ったことがなかった、離れの先にある『子守り部屋』へ……。
「……村長、一馬が来よったで」
「おぉ、ようやっと来たか」
廊下の壁にずらりと掛けられた能面たちから、しわがれた複数の囁き声が響く。
能面の部分は壁がくりぬかれ、廊下が覗ける仕掛けになっているそうだ。壁の向こうには村の年寄り衆が集まり、これから一晩中、僕と母を監視することになっている。
「ええか、一馬。お前は村を出て行く前に、あの部屋で務めを果たすんや」
村長の重々しい声に、他の能面たちも口々に追従しだした。
「せや、大学だので村を捨てるちゅうなら、せめてお前の子種を残すんがしきたりや」
「ほれほれ、襖の向こうにお母ちゃんがおるで……」
「何ぞ遠慮すっことはねぇ。裸にして抱いてやれや」
「お母ちゃんがお前の子を孕めば、儀式は終わりや」
「わしらが一部始終を見とるからの。くれぐれも抱いたふりなんぞするなよ」
 僕は返答をすることなく能面達から視線を外し、廊下の突き当たりにある襖の前に立った。
僕が進学の為に村を出るのなら、その前に母を抱いて、その身に子種を残して行けと……それが村の老人衆から突きつけられた要求だ。
我が家の血筋を決して絶やさないことが、この村のしきたりだという。
両手はびっしょりと汗ばんで震えていたが、襖の取っ手を掴み、一気に左右へ開く。
だだっ広い畳敷きの部屋には、中央には一枚の布団が敷かれ、その脇には僕がこれから抱く女性――実母の百合が、薄い襦袢一枚きりの姿で正座していた。
掛け布団がないのは、行為がしっかりと観察できるようにだろう。部屋の壁にぐるりとかけられた能面は、廊下のものと同じ造りになっている。
「……」
僕を見た母は、無表情を貫いたものの、わずかに血の気が引いたような気もする。
あれだけ逃げるよう言い含めたのだから、まさか来るとは思わなかったのだろう。
息子の贔屓目を抜きにしても、母はかなりの美人だ。
白いきめ細やかな肌に、烏の濡れ羽色の艶やかな黒髪。しとやかで優しげな美貌は、僕が幼い頃から微塵も衰えず、大学に入ろうという年齢の息子がいるとは思えない。まさに年齢不詳の美しさだった。
薄布の襦袢は母の身体にピタリと沿い、肩や腰のなまめかしい曲線を露にしていた。薄布を押し上げるふくよかな胸元に、僕は生唾をゴクリと呑む。
「……この部屋は、赤ちゃんの子守りをする部屋なのかと思っとった。子どもの頃から、入っちゃいかん言われてたからなぁ」
 周囲の能面たちから視線を感じながら、僕は布団の上に座った。
「正しくは『身篭り部屋』言うんよ。あんたを身篭ったのも、産んだのもここ。男が部屋に入るのは、種つけの時だけや」
 母は淡々と答えたが、よく聞けばその声は僅かに震えている。
 今さらながら罪悪感が押し寄せてきて、僕はそれ以上何も言えずに黙っていてたが、能面の一つから発せられた咳払いに、ハッと我に帰った。
母を抱けと言われても、そもそもセックスの経験などない。多少聞きかじった知識を頼りに、母の唇へ自分の唇を不器用に押し付けた。
すると母が自分の唇を開き、舌を突き出してゆっくりと僕の口内へ差し込んだ。ぬるりとした生暖かい舌が僕の舌を捕らえ、チュルンと絡まる。唾液の立てる濡れた音に、ゾクゾクした恍惚が沸き起こった。
快楽に背筋が震え、カッと興奮が煽られる。夢中で母を組み敷こうとした時だった。
「一馬、何で来たんや……」
 口の中で、ようやく聞き取れる程の声で母が呟いた。見張っている年寄り衆に聞こえないように、ゆっくりと僕の口内で舌を蠢かせながら咎める。
「っ……ごめんなお母ちゃん。けど、僕……しきたりだけやのうて……」
 慣れないやり方での会話と、湧き上がる愉悦に流されないように四苦八苦しながら、僕も必死で舌を蠢かせた。
「実は……お母ちゃんにしか勃たんのや。エロ本やらで試しても、他の女はいくら見ても興奮できん」
実母にしか欲情しないという事実は、僕の密かな悩みの種だった。
「大学行って村を出れば、そのうち治るかと思ってたけど……」
 それは無理だという理由が、つい先ほど判明した。
これから母を抱こうとする僕は、やはりこうして近親間の交わりから生まれたのだという。そして我が家は代々、それを繰り返して来たのだと……。
僕の身体に刻み込まれた遺伝子は、もう近親者しか受け付けなくなってしまっている。
舌を絡めたまま、母が息を呑むのを感じた。
「お母ちゃんは……一度だけで良いから、僕に思いを遂げさせて欲しいんや」
「……わかった。あんたが村にいるのもこれきりや……お母ちゃんの身体、あんたに抱かせたる」
 母は覚悟を決めたように言うと、クチュリと音をたてて舌を引き抜いた。

―― 今日の昼、僕は村の入り口で郵便配達から大学の合格通知を受け取った。
山奥にあるこの寒村からでは、高校に通うのさえも容易ではなく、通信教育で資格を取って大学を受験した。
年々過疎化が進むこの村では、進学や就職で若者が村を出ることを極端に忌避する。
そんな中で、大学に進学して学者になりたいという僕の味方になってくれたのは母だ。
父は顔も覚えていないほど早くに亡くなり、物心ついた時にはもう母子二人きりだった。
この村で生まれ育った母は老人衆に渋い顔を向けられつつも、僕が進学できるように、あらゆる手を尽くしてくれた。
喜びに身を震わせ、一刻も早く母に報告しようと、急いで家に掻け戻ったのだが……。
「百合さん! あんた、自分がどういう立場かわかっとるじゃろう!」
 家に入った途端、奥の部屋から村長の怒鳴り声が聞こえ、そのただごとでない気配に、僕はとっさに廊下で息を潜めた。
襖を細く開けて中を覗けば、薄暗い和室で母が村長と向かい合っていた。怒りに顔を真っ赤くした村長を、母はまるで能面のような無表情で見据えている。
「承知しとります」
「しきたりは絶対なんじゃ! 一馬が村を出てしもうたら困るんや!」
「ご安心を。一馬にも、残すもんは残していってもらいます」
 感情をいっさいそぎ落としたような声で、淡々と答える母からは、そら恐ろしいような……どこか神々しささえ感じる雰囲気がかもし出されていた。
そんな母を、村長はしばらく黙って睨んでいたが、やがてフゥと深い息を吐いた。
「その場合は、裏祝言を行うことになるが……」
「……」
 母が無言で頷くと、村長はもう一度重々しいため息を吐き、慌てて隠れた僕に気づくこともなく帰っていった。
(残すモン? 裏祝言?)
 どうやら僕の身の振り方に関係するようだが、まったく意味がわからない。
村長の訪問など知らなかったような素振りで、母に合格通知を渡すと、母も何もなかったように大喜びしてくれた。
……しかし、今日はお祝いだと母が腕をふるってくれたのに、大好物ばかりが並んだ夕食の卓袱台を見ても、僕の心は重苦しくなるばかり。食欲など微塵も沸かない。
 いつもの半分も食べずに箸を置き、チラリと母の顔を伺った。
「お母ちゃん……ほんまに僕は、この村出て大学行ってもええんか?」
 僕の問いに、母は驚いたよう目を見開いたが、すぐにニコリと微笑んだ。
「あんたは頑張ったやないの。この家から学歴ある者がでるなんて、お母ちゃん鼻が高いわ」
「けど、村長さん達は良く思うておらんやろ? 僕が村を出たら、ますますお母ちゃんに風当たりも強くなるやろうし……」
母が僕の進学を応援することで、村の老人衆から裏切り者のように責められるのが、悔しくて堪らなかった。
こうなったら意地でも高名な学者になって、僕を村から出した母の選択は正しかったと、皆に認めさせてやりたかったけれど……。
「……大学出ても学者になれるとは限らんし、お母ちゃんを犠牲にしてまで行こうと思わん」
「犠牲やなんて思わんでええのよ。一馬の幸せがお母ちゃんの幸せや」
「そう言うても、昼間かて村長さんがえらい剣幕で、しきたりだのなんの……」
僕が言うと、とたんに母の顔が強ばった。
「あんた、聞いてたんか」
「う、うん……ごめんな。聞いてしもうたんや」
 バツの悪い気分で盗み聞きを白状すると、母は弱弱しく微笑んだ。
「……ええのよ。どのみち、夕食の後で話すつもりやったんや」
 そして居住まいを正し、不意に自分の顔を指した。
「一馬、正直に答えてや。あんたから見て、お母ちゃんは綺麗か?」
「へ? そりゃまぁ、お母ちゃんほどの美人は、滅多におらんと思うわ」
「あら、あんたに言われると嬉しいわぁ。せやな……自分で言うのもなんやけど、お母ちゃんもそう思うわ」
 フフ、と母は僅かに眉を下げ、自分の頬を指先で撫でた。
「この顔はな、作られたものやねん」
「えっ!? お母ちゃん、整形しとったんか!?」
「そんなわけないやろ。証拠を見せちゃるわ」
 母は立ち上がって戸棚から古いアルバムを引っ張りだした。
「……こんな写真、撮ったっけ?」
 黄ばんだページには、和装で微笑む母と、蝶ネクタイの礼装で緊張している僕の写真があった。
こんな服を着た覚えはないし、そもそもこの写真はかなり古いものだ。
「顔はそっくりやけど、会うたこともない人たちや。近親婚を繰り返した結果、代々そっくりな顔が生まれるようになったらしいなぁ」
母がパタンとアルバムを閉じて棚に戻す。
「……近親婚?」
 さりげなく発せられた単語に、僕が顔を強ばらせた。
「そうや。そんで、同じ顔の生まれる我が家は、昔からこの村の守り神として崇められとるんよ」
 それを聞いたとき、驚愕と同時に僕は、不思議と納得してしまった。
働き手の父がいないのに、僕と母は村で一番大きな古屋敷に住み、食物や日用品なども全て村の人々から届けられる。
『この家には、昔から世話になっちょるから』
いつも告げられていた言葉は、そういう意味で、あれは守り神の家に対する供物だったのか……。
「じゃ……僕も近親間から産まれたんか?」
 しかし母は質問に答えず、今度は引き出しから通帳と印鑑取り出して僕に握らせ、声を潜めて囁いた。
「お母ちゃんはこれから風呂に入って、あんたを離れで待つことになっとる。けど……あんたはこのまま村を出や。これで授業料や当面の生活費はなんとかなるやろ」
 通帳に記された額は、相当のものだった。
「お母ちゃん、これ……?」
「先祖代々が供物として貰った掛け軸や壷なんかを全部売って工面したんや」
更に、通帳に挟まれていた一枚の紙片には、見知らぬ住所が記入されている。
「その住所はあんたの家や。ぼろ家やけど我慢しい。そこなら村の人間は誰も知らん」
「家まで!?」
母は唇にしぃっと指を押し当て、通帳を僕のポケットにねじ込んだ。紙の通帳は、鉄塊よりも重く感じた。僕のために母が費やした苦労の重さだ。
「落ち着いて逃げるんよ。年寄り衆は監視のために離れへ集まっちょるし、秘密を明かされて離れに来る時は、躊躇って時間がかかるもんや。なかなか来なくても不自然には思われん」
「けど、僕が逃げたらお母ちゃんはどうなる?」、
 しかし母は応えずに、すいと僕に背を向けてしまう。そのまま足早に部屋を出ていく凛とした後姿を、僕は茫然と見送った……。

続く。







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若道

奇習・風習という、閉鎖的な社会での出来事・・・
SAYA様の妊活・弐の原点拝読させてもらい、、
半ば興味深く、半ば怖いを感じました。

リアリティのある話であるからこその畏怖とでもいいましょうか。
確かに、世間において、近親相姦ということはあるとしても
それは、血を超えた1対1の世界。個の世界での出来事です。

それが、村社会全体での風習・・・
これは、何なんだろうと・・

続きが楽しみです。
by 若道 (2015-09-20 07:25) 

saya

若道様
いつもありがとうございます。「とうりゃんせ」とか「かごめかごめ」にも似てるのですが、お雛様とお内裏様に見立てた人形を部屋の中央に置いて、一晩宴を続けるという儀式は、今でも普通に行われているんですよ。各家庭の家族構成によって違うのですが、「直系の跡継ぎ」と「異性の第一子」の組み合わせで、名付けをしてから経を読むという感じ。はた目には子孫繁栄を祈ってとうたいつつも、その組み合わせは母と長男、父と長女。そんな風土も各地にあったということなんでしょうね。
by saya (2015-09-20 22:19) 

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