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ss『淫らな手2』

いつもお読み頂き、ありがとうございます。
ちなみに今回は、電車痴漢ものオンリーではないので、もしご期待に 添えられませんでしたら、申し訳ございません(><;)

ss『淫らな手2』

「はぁ……」
 夕暮れのキッチンでキャベツを刻んでいた雅美は、小さくため息を 吐く。
 電車で持ち主不明の手に翻弄されてから、一週間があっという間に 過ぎた。
 陸は軽く会釈すると、混雑しきったホームの雑踏に消えていき、真 相は結局のところわからずじまいだった。
モヤモヤした気分だが、会釈した表情は普通で、とくに変わった様子 もなかったし、あんな一瞬では見間違いということもある。
(やっぱり違うわよね。陸くんがまさか)
 あの混雑具合では、直接に手を掴まない限りは断定できない。やる 方が悪いに決まっているが、証拠もなしに犯人と決め付け間違えたりすれば、雅美だって十分に加害者だ。
 たびたび聞く痴漢冤罪というのは、ああいう場合に起きるのだろう。
雅美は自分へ言い聞かせ、気合をいれて残りのキャ ベツを刻んだ。
「ン……」
 つい、無理やり押し付けられた猥らな快楽まで思い出してしまい、 雅美は腰をもじつかせた。後ろで結んだエプロンの紐と、薄手のフレアースカートが揺れる。
 膣奥がきゅうっと収縮し、柔らかな女陰の表面肉が下着の中で動い た。
 夫は会社で息子はバイト。家には雅美一人きりだ。
 だめだと思いつつ、ゴクリとつばを飲み下す。
(どうせ誰もいないんだし、ちょっとだけ……)
 包丁を置き、シンクに背中をつけてパイル地のマットに座り込む。 膝を立てて脚を大胆に大きく開いた。
 今日は春先にしては珍しいほど暑く、肌が汗ばむほどだった。しかしスカートの中から立ち昇るのは、汗よりも牝の匂いが濃い。
パンストを脱ぎ、そろそろとエプロンとスカートを まくった。太腿の裏へゆっくりと自分の手を這わせていく。

――キッチンでの自慰が癖になってしまったのは、夜の生活が寂しくなり、息子も家より外で過ごす時間の方が長くなった頃だ。
 一人で夕飯を作っていた時、ふと昔見たテレビのワンシーンを思い 出してしまった。
 人妻がキッチンで男に口説かれ、なしくずしに関係を持ってしまうものだ。あれは女の旧友だったか、それとも夫の知り合いだった か……テレビドラマだったか映画のDVDだったかも、よく覚えていない。それほど退屈でつまらなかったのだろう。しかし、そのシーン だけが強烈に脳裏へと焼きつき、いつのまにかその人妻に自分を重ねていた。
「っふ……」
 見る者など誰もいないのに、目を瞑るとM字に開いた脚の前に男が 座り込み、あられも無い姿を覗き込んでいる気がする。男の顔はぼんやりとぼやけ、年齢すらはっきりと決めていない。はっきりするの は、隠し切れない欲情の視線だけ。いつも妄想の中の男は、肉食獣が舌なめずりするように、雅美の身体を眺め回し視線で犯すのだ。
「う、ん……ん……」
 指をずらしていき、下着のクロッチ部分を押すと、ベチョリと愛液 が生地に滲みこんだ。レモンイエローのショーツに大きな愛液の滲みが出来ただろう。
「ん、んん……」
 人差し指と中指をそこに当て、上下にゆっくり何度か往復する。緩 やかな刺激がものたりなくなると、今度は少し強く突き立て、クロッチに出来た液滲みの中央をグリグリと押した。いつも荒々しく下着を ずらし、粘膜を直接嬲る手順とは、まるで違う。
いつのまにか顔のない男の幻は消えていた。雅美を 嬲るのは手だけ。それも実際には見たこともない。電車の中で強烈な快楽を押し付けたあげく、寸止めで放置していった手だ。
雅美は目を硬くつむり、片手で下着のクロッチを脇 にずらしていく。黒い茂みと、ぽってりした肉唇が現れた。あわびのような肉唇の隙間からは、熱い粘膜の花弁がはみ出て、わずかにほこ ろんでいた。蕩け出した粘液が蛍光灯の下で、ぬらぬらと淫靡に照り光っている。
割れ目の縁では陰核がすでに硬くそそりたち、包皮 から顔を覗かせてひくひく震えていた。
「っ、う……はぁ……」
 ここが電車の中であるかのように、喘ぎを噛み殺そうとするが、う まくいかない。喰いしばった歯の間から、上擦った吐息が漏れていく。
 雅美はほっそりした指をぬかるみに沈め、ごく浅いばしょでヌチヌ チと小刻みに動かした。
(あ、ああ……いぃ……)
火照った膣奥にまで快楽の振動が伝わり、子宮に沁 み込んでいく。喉を大きく逸らし、くちくち淫らな音をたてながら、ひとり甘い吐息を漏らす。
(あぁ……だめ……止まらない……)
いつのまにか股間は粘液でぐしょ濡れ、蟻の門渡り までも伝い落ちていた。尻の下に引いたキッチンマットに大きなしみが出来てしまっているだろう。
ここまでが、電車でされたことだ。雅美はあの日の 中途半端な火照りを思い出し、鬱憤を解消するように膣穴へ指を三本捻じ込む。強引な挿入に周囲の粘膜がひきつれたが、かすかな痛みさ えも快楽の味付けになった。もう片手では、陰核を強くつまみあげる。
「きゃぅっ!」
 予想以上の刺激に、思わず高い声をあげてしまった。雅美は息を荒 げ、何度も唾を飲み込む。目端に涙まで浮かべていた。
捻じ込んだ指は激しさを増して膣穴を攪拌してい く。ぐぽっっと大きな空気音とともに、うっすら白濁した愛蜜の塊が糸をひいて零れ落ちた。
(うう……はぁ、は……きもちいい、きもちいい……)
ぐっちゅ、ぐちゅりぐちゅりと、遠慮も恥じもなし に卑猥な音を響かせ、朱唇の端からは唾液をしたたらせた雅美には、普段の良妻賢母の面影は無い。ひたすら牝の欲望をむき出しにさせた 恥女だった。
「ひっ、ひ……ひぃ……ああぁ……」
 キッチンで淫らな自慰など止めなければと、ずっと前から悩んでい た。今は誰にも見つかっていなくとも、ずっと見つからない保証はない。なにより、自身で恥じているのだから。
 しかし一方で、その見つかるかもしれないというスリルと、いけな い事をしているという背徳感が、雅美をいっそう燃え上がらせていた。
 寝室で鍵をかけてする事にしようともしたが、ここでするエクスタ シーの半分も得られず、つい戻ってしまう。
(駄目……ダメなのに……止まらないいい! も、もっと……)
 自慰の快楽に惚けた妄想で、雅美の周囲はキッチンと電車とを忙し く行き来する。
 どうせあんな混雑なら、他人の下半身を見ることすらできない。指 だけでなく、もっと大きなものを挿入しても……。
 膣から指を抜き、片手でシンクの上を手探りする。
 明日の朝食用にと買っておいたバナナが指先にさわり、固い南国の フルーツを引き降ろした。房から一番大きなものを外して、茶色く窄まった先端を膣穴へ押し当てる。
(ちょっと……まって、私なにしてるの……?)
 息子が幼い頃から、食べ物で遊んではいけませんと厳しく躾けてき た。数え切れないほどキッチンで自慰をしても、食材を体内に挿入したことなどない。
(で、でも、もう……)
 我慢できない。両手でバナナを握りなおし、息を飲んで一気に膣内 へねじこんだ。
「あ、ぐぅ!!」
 固くざらついた先端は、思いのほか痛かった。しかしすぐに濃い蜜 がからんで衝撃を和らげる。奥まで濡れに濡れた柔肉がスベスベの黄色い表皮に絡み、もっと奥へとうねりはじめた。
「はぁ、あ、は、あぁん……」
 本当は少し、自分にはマゾッ気があるのではないかと思う時があ る。夫からの労わるようなセックスも好きだが、どこか物足りない。犯される想像をしながら、こんな風に自分で痛めつけるような自慰を すると、子宮の奥から燃え上がるほどの愉悦がこみ上げてくる。
「あ、あ、あうううぅ!」
 もう何もかも忘れ、夢中で黄色い南国果実を激しく抜き差ししてい た。あげくに茎の部分ぎりぎりまで押し込み、カーブした先端が感じる場所を押し上げる位置で腰を揺する。
 自分でしているのに、無理やり犯されている錯覚におちいってい た。
(イ、 いかせて、イかせてえええっっ!!)
 妄想の中、痴漢へ媚びた懇願を響かせて、雅美は駄目押しにと腰を を大きく揺らめかす。
「あっ! あっ! あ、ああああっ!!!!」
 目の前に火花が散り、股間からぐちゅっと潰れた音が起こる。
「はぁ、はぁ……」
 雅美は荒い息をつき、膣穴からバナナをじゅるんとひきずりだし た。固い表皮はそのままでも、余りの膣圧に柔らかな果肉が潰れてしまったらしい。
(ああ……やっちゃった……)
無残にひしゃげ愛液まみれとなったバナナを、心の 中で詫びてから蓋つきの生ゴミ入れに捨てる。
 下半身はぬるぬるで、潰れたバナナの甘い匂いが牝の蜜臭と混じ り、濃い匂いを発していた。それに全身が汗だくだ。
手早くシャワーでもあびようと、よろめきながら雅 美が身体を起こした時、テーブルの上で携帯電話が振動した。
「あら?」
 息子からのメールだった。どうせ、急に夕食を友達を食べることに なったとか、そんな内容だろう。
「えっ」
 小さく溜め息をついて受信メールを開き、雅美は思わず声をあげ る。
『明日の夕飯、カレーつくってよ。陸がうちに泊まりにくるから』
 小さな画面を、雅美は何度も見直した。
明日は金曜日。昔はよく、陸は週末に泊まりにきた し、逆に息子が泊まらせてもらうこともあった。
この前に会った時、遊びに来なさいと言ったのは自 分だ。電車のアレは陸に無関係とも、納得した。
なのに、なぜか非常に落ち着かない気分だった。

続く

ss『淫らな手1』

「あら、陸くん」
 夕方のホームで見知った顔に、雅美は小さく声をあげた。
「あ、直哉のお母さん」
 高校の制服をきた少年が、軽く会釈する。同じマンションに住む陸は、 雅美の息子と同級生だった。元、同級生というべきか。高校は違うが、幼稚園から中学までずっと一緒だった。
 幼い頃から剣道を習っているせいか、陸はとても礼儀正しく、雅美は彼 を非常に気に入っている。
陸は高校でも剣道部に所属しているらしく、鞄の他に竹 刀や重そうな荷物を一式、肩に背負っていた。
「久しぶりね、元気にしてた? 陸くんが来ないと、やっぱり寂しいわ。 同じマンションなんだから、また遊びに来てね」
たわいない会話を続けるうちに、ホームに電車が滑り込 んできた。
ホームも混んでいると思ったが、車内は壮絶に混雑して おり、まさにすし詰め状態だ。人身事故の影響でダイヤが大幅に乱れたせいだった。それがなくても、この夕方の時間はちょうど混み合う頃 だった。
(わ、すごい……)
周囲の乗客に押しつぶされそうになる。雅美は専業主婦 で、普段から満員電車には乗りなれていない。
短大を卒業してから都内の企業に勤めたが、半年ほどで 上司との間に直哉を妊娠して寿退社した。
今は夫となっている上司は、一番美人の新入社員に ちゃっかり目をつけたと、からかわれたらしい。退社後に、夫からそんな話を聞いた時は、嬉しくもあり驚いた。
雅美は交友関係も派手ではなく、それまで特に美人とチ ヤホヤされた覚えも、とりわけ目立った覚えもなかった。艶やかでまっすぐな黒髪は自慢だったが、自分で誇れると思うのはそれくらいだ。
 実際のところ、清楚な顔立ちと意外になまめかしい体型をした雅美へ、 密かに想いを寄せる異性は多かったのだが、遠目に眺めるだけの憧れは、本人には気づかれなかったのだ。
しかし出産し、『雅美』ではなく『直哉のお母さん』に なってから、もう16年。真面目な雅美は、妻として母として日々を頑張っていた。
身だしなみには気をつけるが、必要以上に浮つくでもな く、若かりし日の良い思い出と言ったところだ。
そして今日は買い物に出たところ、たまたま当時の同僚 女性と会い、つい話が弾んで遅くなってしまったのだ。


 陸は雅美のちょうど向いに立ち、やはり身動き一つできないほど固めら れていた。激しい混雑具合に、雅美と陸の身体の前面は密着状態にある。幾何学模様のワンピースに包まれた豊満な乳房が、ちょうど陸の荷物 を背負っていない側の腕に、押しつけられていた。
「あらまぁ、すごく混んでるわね」
 雅美は誤魔化すように、小声で苦笑する。
混雑による不可抗力なのだが、赤の他人ならともかく、幼い時から知る相 手というのが、なんとなく気恥ずかしい。しかもブラジャー越しに、乳首へ甘い刺激がチリリと伝わってくる。
(やだ……息子と同い歳の子を相手に……)
罪悪感と羞恥が入り混じったような、なんとも居心地の 悪い気分だった。
「朝とか、もっと凄いですよ」
 陸も小声で反す。彼はとくに気にしている様子もなかった。毎日の電車 通学では、こういう事態も珍しくはないのかもしれない。
その時、電車が大きく揺れ、他の乗客に背中から押され た雅美は、よりいっそう密着してしまった。
 雅美の乳房は、陸の腕に絡んだまま擦られ、大きくグニュリと歪む。擦 られた乳首にいっそう強い刺激が加わし、柔らかな胸脂肪が動く感触は、陸にも伝わってしまっただろう。
 なんとか足を踏ん張り必死でバランスをとるが、ふと 股間の辺りに蠢くものを感じた。スカートの布越しに、雅美の恥骨周辺をまさぐっているのは、誰かの手らしい。
(え!?)
混雑しすぎて、下を向いても自分の下半身をきちんと見 ることさえできないが、確かに誰かの手が、そこに触れているようだ。
(やだ、痴漢!?)
とっさに声をあげようかとも思ったが、もしかして思い 過ごしだったら……と思うと、踏み切れない。
そしてふと気づき、雅美は驚愕した。位置からして、ど うやらこの手は、雅美が乳房を押し付けている陸の手のようなのだ。
(ま、まさか、陸君が……)
躊躇っているうちに、手の動きはさらに大胆になってき た。スカートの布上から、恥骨の形をなぞるようにゆっくり撫で下ろしていき、割れ目の先端までくると、指先をグリグリと突きたてる。
明かに、混雑で偶然に触れたとはいえない仕草だった。
(で、でも、そんな……)
 こっそり覗きみた陸は、平然とした表情で車内の吊り広告へと視線を向 けている。
 とても女性の……しかも友人の母親の下半身を弄っているようには見え なかった。
「っ!?」
不穏な手は、ワンピースの裾をたくし上げて、じかに下 着へと触れてくる。シルクサテンのショーツとナイロンのパンストは、どちらも薄すぎてガードにはならない。太腿をきゅっと閉じたが、小さ な逆三角形の隙間に、手を捻じ込まれる。骨ばった指を太腿で締め付けるような形になってしまった。
「……っ」
 用を足した後で拭く時のように、下着の上からゴシゴシと陰裂を前後に 擦られ、短く息を飲む。
誰にされているかもはっきりしないのに、腰に痺れるよ うな感覚が沸き、奥からじわっと熱いものが滲んでくる。
ここ数年は、夫婦の営みも年に片手で数えられるほどに なっていた。夫婦仲は良好だし、少々物足りないものの、雅美の夫はかなり年上だ。こんなものかと諦めていたのだ。
それが突然の「痴漢」という出来事。ある意味で何より も雅美を「性対象の女」と扱っている行為だ。
まぎれもない犯罪だし、不快には違いない。しかし、奇 妙で甘美な優越感も、確かに与えていた。
(ん……ん……)
 秘裂を前後に撫でていた指が、今度は敏感なクリトリスを抉りこむよう に、上向きに突き立てられ、小さく円を描き始める。ビンビンと弱い電気を当てられているごとき刺激に、腰がくねってしまいそうになった。
雅美は唇を噛んで俯き、必死に声を殺す。ショーツの中 にトロリと熱い蜜が零れおち、股布へしみこんでいく。
(あ、ああっ……だめ……)
 パンストとショーツを、そのまま膣穴に捻じ込もうといわんばかりに、 ぐいぐい押し込まれる。強い圧迫に、膣から溢れる蜜が更にショーツへ滲みこみ、薄布を突き抜けてパンストまで濡らす。
(く、ああ……)
 間違いなく痴漢の指も、濡れてしまっているだろう。
 濡れそぼった下着を前後左右に擦りつけられると、陰唇からたまらない 愉悦が立ち昇ってくる。ガタゴトとうるさい音を電車が立てていなければ、卑猥な水音が聞こえてしまったかもしれない。
 気づけば雅美は太腿をもじつかせ、与えられる快楽を必死で拾い集めよ うとしていた。
(あ、ああ、あふ……)
 じわじわと競りあがっていく快楽に、脳髄が痺れていく。周囲に無数の 人がいながら、こんなことをされているなど、生まれて初めてだ。誰も気づいていないようだが、もし気づかれたらと思うと、冷や汗を背筋を 伝う。
 特に、陸に気づかれでもしたら、この先大変に気まずいことになると思 うのに、つい吐息を吐き出して、彼の腕に押し付けた乳房を震わせてしまった。
(も、もう少し……)
 誰とも知らぬ手に絶頂を味合わされるなど、人によっては断固として拒 否するだろう。雅美だってこんな事態に陥るまでは、そんなことは絶対に御免だと思っていた。
 しかし、日照り乾いていた女体へ、突如として与えられた潤いは、思い のほか甘美で雅美の理性を奪っていく。自身の肉体を襲う、甘い疼きにブルッと身震いした。
(あ、あ……)
 指は蠢き続け、今や愛液はパンストの太腿部分まで濡らしていた。 元々、濡れ易い性質だったが、異常なシチュエーションが妙な興奮を呼びさましているのだろうか。ショーツはグジュグジュになり、まるで粗 相をしてしまったようだ。
 いいようにされて情けない、という羞恥心が、かえって雅美の全身を敏 感にしていく。自分でも止めようがなく、腰がわずかにくねり、むっちりした太腿で痴漢の手をのがさんとばかりに締め付けてしまう。
(っ……ぅく……)
 快楽の爆発まであと少し、という時、社内アナウンスが流れた。まもな く雅美の降りる駅へ到着するのだ。
「あっ」
 パッと手が引き抜かれ、思わず小さな声が零れた。昇ろうとした階段 が、目の前で消えてしまった気分だ。
 頬を蒸気させ雅美は荒くなりかけた呼吸を、なんとか静めようとした。 その視界端に、ふと陸の口元が映る。真面目そうに引き結ばれた口元が、ニヤリと少しだけ歪んだような気がした。
(えっ!?)
 戸惑う雅美を他所に、電車はホームに到着し、扉が開く。
この駅で降りる人は多かったらしく、雅美も他の降客に 流されるようにして、電車から放り出された。
 

ss『監獄母子犬飼育 8』(最終)

今にも崩れ落ちそうな廃倉庫には、澱んで饐えた空気が 漂っている。ナンバーを隠したトラックが建物の前に止まり、顔を隠した男達がシートに包んだ何か大きなものを運び込むと、すぐに去って 行った。
埃と羽虫の死骸が散らかる、空っぽだった建物の中央に 運び込まれたものは、コンクリートの分厚い壁板だった。
壁には全裸の若く美しい金髪女性が、腰を突き出すよう な姿勢で身体を曲げて、胴と腕の一部を埋め込まれていた。コンクリートの前面からは、形のいい乳房のすぐ下と上腕部までが突き出ていて、 革の太いベルトが首と額を強制的に支えていた。反対側からは、絹のような光沢を持つ丸く引き締まった尻がつきでている。もちろん秘所を覆 い隠すもの、金色の薄い恥毛のみだった。若さに加えてあまり性交の経験がないのか、女陰はぴっちりと閉じ、色素も定着はしておらず、初々 しいサーモンピンクだ。
極上の美しい女体が、胴と腕をコンクリートにはめ込ま れている。なんとも凄惨で異様な姿だった。見事な脚線美のすんなりした長い足には、高価そうな黒いハイヒールを履いていた。惨めな女が身 につけている、唯一のものだ。
この細く固いヒールで、幾人が踏みにじられてきたか、 靴の持ち主もいちいち覚えていないだろう。
「う、うううう……!」
つい先日まで、収容所の女帝として君臨していたエルケ は、歯軋りをして血走った眼で辺りを見渡した。怒りに狂うことで、恐怖と混乱からかろうじて自我を保っていた。
(ふ、ふざけるなぁあああああっ! あの裏切り者めっ! よくも私にこ んな辱めを……!!!)
 腸の煮えくり返る怒りの中、昨日まで側近として扱っていた男の顔がチ ラつく。
 銃をつきつけた男は、エルケを縛り上げると信じがたい事を告げた。男 は敵国のスパイで、つい先ほど祖国は敵国に降伏したというのだ。
 収容所の立つ地は辺鄙な田舎で、実際に戦地となったことはなかった。
それでも前線の情報は小まめに入ってきた。戦況が不利 になれば駐在する兵を送るし、いざとなれば収容所の囚人は人質にもなる。
そして、万が一の最悪の事態……つまり敗戦が確定とも なれば、エルケのような幹部クラスだけでも、いち早く逃げられるようにだ。
 だが、身分を偽り潜入していた男は、通信機器の工作までやってのけ、 偽の戦況情報を流していたのだ。それはたった数日のことだったが、致命的だった。

 エルケの祖国は降伏し、独裁者は自殺をしていた。
収容所の主要な人物は残らず拘束され、囚人は解放され ることとなった。

エルケも拘束されて一室に閉じ込められたが、その時は まだ、己の運命を甘く見ていた。いずれ軍事裁判にかけられると予想し、最大にうまく立ち回ろうと決意していた。なにしろエルケは、天使と 呼ばれるほどの美貌を持っていたし、少女時代は女優を夢見ていた事もある。収容所の悪女ぶりは全て強要されたものであったと、悲劇のヒロ インを演じて、裁判員や民衆の同情を掴む自信は十分にあった。
しかし男は、エルケを軍に引き渡す気はないと言った。
『吐き気がするが、俺はお前と同じ位置まで堕ちて復讐をする』
 そういった男は、部下と共にエルケをコンクリート漬けの姿にし、この 場所に放置したのだ。車で運ばれたのは数時間か、もっとかかったかもしれない。ここが国内か国外かもわからなかった。
(す、すぐに、誰かに見つかって助けてもらえるわ! 裁判にもかけず私 刑にするなんて、許されないもの!)
 自分がしてきたことはすっかり棚にあげ、ガチガチと恐怖に歯を鳴らし ながら、エルケは自分を励ます。
 不意に、ぎいっと軋んだ音をたてて扉が開き、ビクリと肩が震えた。
 薄汚れた身なりの男たちが十数人、ぞろぞろと倉庫に入ってきた。いず れも荒んだ風貌をしており、ろくに風呂にも入っていないらしく、酷い悪臭を漂わせている。
「!!!」
 エルケは全身から恐怖の脂汗を滲ませた。男達の服装や髪、肌の色など から、すぐにわかった。
彼らは、今までエルケの国が虐げて排除してきた民族な のだ。
「おい、俺たちの仲間を何万って殺した、収容所の女責任者なんだって なぁ?」
 先頭に立った中年男が、怒りにギラついた目でエルケを見下ろす。身体 を折ったエルケの顔は、ちょうど男の股間部分辺りにあった。
「なっ、ひ……人違いよ! 収容所なんて関係ない! ねぇ、助け て!!」
 エルケが震え声で叫ぶと、後ろから一人の男が進み出た。
「落ちぶれたもんだなぁ? エルケ女王さま」
「ひ……!?」
 男の吐いた生臭い唾が、エルケの頬に当たる。垢だらけで無精ひげに覆 われたこんな男などに、覚えはなかった。しかし向こうはしっかりと覚えているらしい。
 エルケの金髪を鷲づかみにして引っ張りながら、憎憎しげに言った。
「ここはな、あのクソみてぇな国で虐げられた奴が逃げ込めた国境地区だ よ。喰うにも困る日々だが、収容所に比べりゃ天国だ。あそこから脱走した俺が証言するぜ」
「あ……!!!」
 エルケの顔が蒼白になる。収容所の警備は堅固だったが、エルケが就任 した後に、一人だけ脱走した男がいたのだ。
 上への報告には死亡記録と改竄して誤魔化し、その後は何もなかったか ら、殆ど忘れていた。
 かつての囚人だった男は、あられもない姿のエルケに薄ら笑いを浮べ る。
「さっき、俺たちにお前の事を教えてくれた奴がいてな。クソ虫以下の女 を、好きなだけ嬲っていいんだとよ」
「な、なんですって!? おだまり! 下等な……」
 思わずいつもの本音が出てしまうと、脳が揺れるほど殴られた。
「あぐっ……ううう……」
 涙目になって痛みに耐えていると、男達が音をたててズボンを脱ぎだし た。ムワッと目に滲みる猛臭がただよい、吐き気を催す。
「見ろよ、いいもん喰って育った乳は、立派なもんだ」
 タプタプと乳房を揉まれ、エルケは総毛だつ。
「ひっ! やめて!!」
 別の男は薄笑いを浮かべ、白いカスのこびりついた陰茎を自分で擦って いた。そして膨らんできたそれを、エルケの口元に押し付ける。
「舐めて綺麗にしろ。便器女」
「う、ううう……」
硬く引き結んだ唇に、恥垢とぬるぬるした腐汁が塗りつ けられる。
「早くしろ。心をこめて掃除するんだ。歯でも立てたら、目玉を抉りとっ てそこに突っ込むからな」
 脅すように左の眼球へ指を押し付けられた。
蝶よ花よと甘やかされ、かしづかれて生きて来たエルケ は、男性器を口に含んだ経験などない。ベッドではいつも、自分が気持ちよく愛でられるだけだった。
しかも、こんな不潔な性器など、目にしたもの初めて だ。
(下等種の性器を……口にっ!? そ、そんな屈辱……っ! い、痛 い!!)
しかし、脅しではなく本気で眼球を押し潰しそうに瞼を 押され、痛みに耐えかねて口を開く。
途端に容 赦の欠片もなく、太い汚れ切ったペニスがエルケの唇を割り開いた。ゴリゴリと遠慮なしに喉奥まで突きこまれ、強烈な苦味と生臭さに胃液が競りあがってくる。
「んぐっ!? ぐうむ! うゲッ! うぇえゲッッ!!」
(息っ……苦ひい!! 死ぬううううっ……!)
 窒息を逃れたい一心で、エルケは不潔な性器を舌で押し戻そうとする。
「おォうっ、いいぞぉ、俺のチンポッ、気に入ったのかよ! ベロベロ舐めてやがる!」
「ち、ちが……べ、べぇ! うぐくううう!!!」
必死で否定しようとしたが、顔を掴まれ、さら に強引に喉奥の粘膜を割り開き、肉棒を根元まで突き入れられてしまう。
男は下腹をエルケの顔になすりつけるように、 腰を突き出し前後に激しいピストンを開始した。
「グップブプ! ごぼぼお!!! がばぶぶ!!!ごぼごぼごぼご!!ウウ~~~ッッ!!」
 男の下腹がエルケの顔にゴンゴン辺り、唾液が飛び散る。下品極まりない音が、女帝の口か らひっきりなしに鳴った。
「これからてめぇが口に出来るのは、俺たちの精液と小便だけだ! ありがたく餌を頂戴し ろっ!!」
雄たけびを上げた男は、一瞬腰の動きを止め、激しく身 体を痙攣させた。
 ドッブリュリュリュゥッ!!! ドブブブブブブブブッ!!!!
 口の中へ、熱い腐汁の奔流が噴出されていく。
「ごぶぶう!? ぶぼぼぼっ! うぐぐぐぐううううッ!」
 肉棒に口を塞がれたまま、エルケは激しくえづき、むせこんでしまう。 逆流した精液と鼻水の混合物が、鼻の穴から盛大に飛び散った。
「ぐびゅっ!? げぶっ! ぐぁっ、あごぅっ! ごぼぼっ!」
「きたねぇ!! せっかく出してやった餌だぞ! 残さず飲め!!」
(ぐ、ぐるじぃぃっ! 不味いっ、ぐえっ! 息が出来なひぃ いっ!!!)
もがき苦しむエルケに配慮されることなく、濃厚な精液 が噴出されていく。
 男達のゴツゴツとした複数の手が、容赦なく頭を押さえこみ、鼻をつま まれて飲み下すことしかできない。
「ぐ、ぐ じゅずるっ! じゅじゅ! ぐびっ! ごきゅっ! ごきゅぅっ! じゅずずっ、ごきゅぅぅっ!」
 無理矢理に精液をすべり落とし、胃の中へと流し込まれてしまう。
(ご、ごんな、汚いのをおおおっ!! 飲んでるうう!? いやああああ あ!!!!!)
「ぐええええっ!! げほ、げほほっ!! かはぁーーっ…… はぁーーっ……」
 ようやく萎えた性器が口から引き抜かれ、口を閉じることもできないま ま呼吸を繰り返す。
 しかし、疲労に閉じかかっていたエルケの目は、次の瞬間にまた大きく 見開かれた。
「ひいいいいっ!?」
 自分では見ることのできない、コンクリートの後ろ側。女性器にグリリ と熱い塊が押し付けられたのだ。
「い、いやああ!! ひ、ひ……」
 そこは脂汗でじっとりと湿り、強烈なイマラチオによる女体の反射から 多少は潤っていたが、十分な濡れ具合にはほど遠い。
 それでも尻たぶを大きく左右に開かれ、次の瞬間には遠慮なしに野太い 肉槍で串刺しにされた。
「あぐっ!! ひぎいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
 肉のひきつれた痛みにエルケは悲鳴をあげた。
「おおー、ぎちぎち締めてくるぜ」
性の快楽など欠片もない。誰に挿入されているのかもわ からないまま、子宮をガンガン突かれまくる。さらには肛門にも何か固い物が押し当てられた。明かに性器ではなく、何も見えない状況が、 いっそうの恐怖をかもし出す。
尻の穴に固いざらついた異物が捻じ込まれ、エルケは痛 みと恐怖に絶叫した。
「い、いぎぃぃぃっ!? ぎゃああああ!!!!!」
「ああ? てめぇは囚人の尻穴に棒を突っ込むのが大好きだったらしい じゃねーか。そこらに落ちてた枝を突っ込んでやったんだぜ。喜べよ」
 血の滲む肛門にささくれ立った木の枝を突きこみ、男がグニグニとこね 回す。
「こっちも休んでる暇はねーぞ」
 別の男が、先ほどよりも一回り太くすっぽり皮の被った包茎ペニスを、 エルケの口にまた突きこんだ。
「がっ、がぶっ!? んぐっ、ふぐっ!? ぐぅぅ!  うっ、うぐぐぐっ!!!」
再び喉を塞がれながら、今度は性器と肛門にも責め苦を与えられていくエ ルケ。
 あれほど蔑んでいた者たちの精子が、口に性器に流し 込まれていく。
「ぐ、ぐお゛っ! げぶっ! ぐげぇえっ! んぶぶぶぶぶッ!」
 エルケはいまや、本気で泣いていた。うまく世間を立ち回るための嘘泣 きではなく、心底からの苦痛から悶え苦しみ絶叫していた。
しかし惨めで悲惨な姿を晒せば晒すほど、嘲笑をあびせ られるだけ。
同情する者は、誰一人としていなかった。

***
 マリアは、息子がよく眠っているのを確認し、そっと扉をしめた。
 リビングには私服をきた男が……エルケの側近を装っていた、あの男が 椅子に腰掛けていた。彼の本名はフランクというらしい。
母子が彼に保護されてから、数ヶ月が経過していた。
ここはあの国から離れた安全な地で、収容所で虐げられ ていた人々の保護区からも、少し離れている。
男はどうやったのか、移住に関する全ての手続きをして くれた。小さなアパートへの入居手続きも、母子がこれからひっそり生活できるために、生活補助費まで受けられるようにしてくれたのだ。
「……ヨランの具合はどうですか?」
 苦しげな声で尋ねるフランクに、マリアは静かに答える。
「ええ、まだたまパニックを起こしますが、お医者さまも驚くほど回復し ております」
 収容所から保護された時、ヨランはかなり精神を病んでいた。
もう安全だと言われ、元の穏やかな少年の顔を取り戻し たが、ちょっとしたきっかけでパニックを起こしては、赤ん坊のようになったり、狂ったように乱暴にマリアを犯したりする。
 それでも優秀な精神科医も紹介してもらえ、保護直後よりも確実によく なってきていた。
「あの子の父親も、強い人でしたから」
 ニコリとマリアは微笑んだ。その顔を正面から見られないというよう に、フランクが俯く。
 保護された直後、マリアは彼がヨランの父と親友だったことを聞いた。
 二人が隣家に暮らしていたのは、フランクの親の仕事関係で、たった一 年ほどだったらしい。だが、厳格な父への反抗と鬱屈から荒みかけていたフランクを、兄のように励まし立ち直らせてくれた恩人だったそう だ。
 マリアの祖国が、カリスマ性に溢れた独裁者の出現によって急激に狂い 始め、厳しい民族差別を始めた時、フランクはすでに外国で暮らしていた。
 それでも手紙のやりとりはしていたから、早く逃げるように伝えたが、 次の返信はこなかった。
 当時はまだ未成年だったフランクに詳細を調べる力はなく、何年も経っ てから親友が渡航の一歩手前で捕まり、あの収容所で死亡したと知ったのだ。
 軍の作戦で看守として潜入したフランクは、ヨランを一目見て、髪や目 の色以外は親友にそっくりだと驚いた。そしてマリアを密かに調査して親友と彼女の接触があったことを知り、秘密を探り当てたのだ。
 決定的な証拠はなかったが、確信したフランクは、囚人の一人に嘘の証 言を言わせて、エルケにマリアの秘密を暴露したのだ。
「どう償おうと、あなた達にしたことを許してくれとは言えない……」
 フランクはうな垂れて悔恨を吐く。苦悩を滲ませる男に、マリアは優し く首を振った。
「貴方は、わたしたちを助けるためにやったのでしょう?」
エルケはマリアという極上の玩具に夢中となり、それを 与えたフランクを一番の側近に代えて様々な特権や書類の代筆を許した。
その結果フランクは、エルケを密かに追い詰める数々の 準備ができるようになった。
 何よりも、マリアたち母子の秘密が事前に暴かれていなければ、収容所 が包囲された時にマリアはエルケの側近として投獄されていただろう。
 彼女が捕虜の虐待をしていなかったのは周知の事実だが、狡猾なエルケ は万が一の時がくれば、自分のした悪行を全て側近のマリアに被せるつもりでいた。
 そういった事をマリアはフランクの部下から聞いていたし、それらは全 て納得できるものだった。だから、彼女は率直にこう言った。
「それに、どうしても彼の子を欲しいと言ったのは、私なのです。彼は私 に被害が及ぶとためらったのに……。そして、あそこで息子と平穏に生きようとするために、私も幾人もの囚人を見殺しにしました。だか ら……その罪が自分にも返ってきただけなのです」

 深く頭を下げて帰るフランクを見送り、マリアは膨らんだ腹をそっと撫 でる。
 保護されてしばらくして、身篭っていることに気がついたのだ。ヨラン 以外に膣へ挿入した者はいないのだから、彼の子に間違いなかった。
 わが子と子を成すなど、禁忌のはずだ。
 それでも腹の子の存在を罪と呼ぶ気にはなれなかった。
 空を見上げると、さきほどまでどんよりと立ち込めていた鉛色の雲にわ ずかな切れ目ができ、細い陽光がさしていた。天使の階段と呼ばれる、美しい光だ。
 死しても尚、間接的にマリアとヨランを守ってくれた天国の夫へ、声が 届くような気がした。
(あなた……ヨランもきっと立ち直って、立派な父親になれますよ)



今回は今までで一番長く、かつ内容も異色なものになってしまいました が、おつきあいいただき、ありがとうございました!